−レッツ☆ウォー− 


しじん☆戦争(2006.7.15)

「……いっちゃん。信じ続けることは愚かなの?」
 再び、というよりも日常と化している唐突な問い。空は何気に曇っていて、遠くで雷なんかが鳴っている。とある休み時間の双葉と俺。
 二つ括りの髪には花の飾りが光っていて、首を傾げる動作できらりと輝く。次の授業の準備をしていたが、幼馴染みによって見事に哲学的な話を振られた。
「何で? 別にいいんじゃん、信じるのは勝手だろ?」
「でもね、詩人さんが言うのよ。信じ続けても必ず報われる訳ではない。裏切りは常に起こり、信じる者は傷付く。信じ続けることは無駄で、信じ続ける者は愚かだと言われたの」
「いや、何繋がりでそんな話に……」
 どこか悲しげに言われて、何の目的でこんなことをこいつに吹き込んだのかが気になった。それ以前に、詩人って誰だ。
「双葉、人を信じられない奴ほど愚かな者はいないぞ。裏切りが怖くて他人と生きていけるか? ある程度の信頼がないと、世界はうまく回っていかないんだ。人は傷付いて、それをバネに成長するんだ。お前にそーゆーことを言う詩人って奴にはな、『うるさい根暗』って言っておけ」
「……そうね。人を信じられないなんて、やっぱり悲しいわね。詩人さんにはそう言っておくわ」
 花が咲いたような明るい笑顔で言うと、双葉はすたすたと女子のグループに戻っていく。去り際に、「私はいっちゃんを信じる」と言ってくれた。素直にありがとう、双葉。
 自分で考えて、裏切り者がいる可能性の悲しさと、信じたいという思いにぶつかったのだろうか。悩むようになるとは、奴も少し大人になったな。
 双葉が去った俺の側に、双葉ファンクラブなるもののメンバー、そして、俺の友達でもある奴が駆け寄ってくる。
「壱哉、双葉ちゃん何て?」
「詩人って奴に信じることは愚かだと吹き込まれたらしい。否定しておいた」
「グッジョブ壱哉っ。山口は殺すっ! 純粋な娘に何てことをっ」
 後で判明したが、自称・詩人の山口という他クラスの男子が、双葉に哲学的なところを見せ付けていたらしい。天才肌の俺に惚れろと言いたかったのかもしれないが、それこそ無駄だ。双葉に哲学は理解できない。
 ……即日、ファンクラブによって処罰が決定され、制裁が下された。裏切りより怖い影の勢力を知ったな、山口。

☆ 本日の試合結果。双葉勝利。


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